輝く肌への道:2、御馳走タイム

エッセイ

掲載雑誌:婦人公論 2006年5/7号より

輝く肌への道 −水の惑星・ご馳走タイム・薔薇色の夢−

2、御馳走タイム

少女の頃の話だけどね、と彼女が言った。「瓶に小分けにして、母親の乳液をこっそり使ってたの。減った分は牛乳を足しておいたわ」

ばれなかったの?と私。

「何だか変だって、首を傾げてたわ。でもね、どうしても付けてみたかったの」

どうしてと私。

「だって、おいしそうだったんですもの。うちの母ってね、乳液を付けた後は必ず、口を少し開けて溜め息をつくの。ほっという感じで。それって母がおいしいものを食べた後の癖だから、とくに大好物の苺のショートケーキなんかをね、私も試してみたくって」

「それでどうだった?」

「おいしかったわ。母の気持ちがよく分かった。おでこに乳液を乗せると、おでこがおいしいって言うの。もちろん今は毎日、朝と寝る前に付けるけど、これって至福のひとときよね。とくに夜、お風呂上がりの上気した頬に“御馳走”を上げると、笑いが込み上げてくるの。“ほっぺが落ちそう”という表現は、このためにあるんじゃないかと思うくらい。主人も、君の肌はいつまでも、赤ちゃんみたいだねって言ってくれるし・・・・・」

「まァ、相変わらず、仲のおよろしいこと。御馳走様」