エッセイ
掲載雑誌:婦人公論 2006年5/7号より
輝く肌への道 −水の惑星・ご馳走タイム・薔薇色の夢−
1、水の惑星
ブルーに輝く地球の写真。その下には、地球は水の惑星、という一文があった。それを雑誌で見つけた時、彼女は嬉しくなった。ハタと膝を打ち、そうよね、そうなのよ、と大声で叫び出したいくらいに。ということは、六十兆の細胞を有し、小宇宙にたとえられる私達人間も、水の惑星の一部だってことよね。
化粧水をコットンで叩いた後、肌に馴染ませる。掌で顔を包み込むようにして。
皮膚と皮膚の間の空気が温まって、グングンという感じで浸透してゆくのが分かる。
鏡の中で、小さな惑星が輝き出す。顔って、どのくらいの数の細胞で出来ているのだろう。六十兆分の何兆かの細胞が水分を吸収し、ひとつひとつがふっくらとしていくイメージが、彼女を幸せにする。
いつだって硝子窓越しの朝陽は、彼女の味方だ。励ましてくれる。いいかい、昨日の悩みはもう過ぎたこと。今日のあなたはこんなにも元気で、こんなにも若々しい。
花には水を、彼には愛を、そしてお肌には化粧水を。歌うように彼女は独り言を言う。そして鏡に向かい、にっこり笑う。そうそう、もひとつ大事なことを、忘れちゃ駄目ね。心には微笑みを、と言いながら。